帝王切開になるケースや手術の流れ、リスクや注意点などを知っておこう

帝王切開と聞くと、手術への不安や痛みなどを心配する人は多いでしょう。
全分娩の約2割が帝王切開で行われていることからも分かるように、母子の安全を守るための重要な選択肢となっています。
(参考: 厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」)
この記事では、どのような出産が帝王切開になるのか、帝王切開の流れやリスク・注意点などを紹介します。
帝王切開はさまざまな理由で行われているため、特に帝王切開の予定が決まっている妊婦さんは、この記事を読んで理解を深めていただければ幸いです。
帝王切開とは

出産は大きく分けて経腟分娩(自然分娩)と帝王切開の2種類ですが、そのうちの帝王切開も大きく2種類に分類されます。
ここでは帝王切開について詳しく紹介します。
予定帝王切開と緊急帝王切開
帝王切開には予定帝王切開(計画帝王切開)と緊急帝王切開の2種類があり、どちらも胎児側と母体側の、それぞれに理由があります。
予定帝王切開は、37〜38週頃を目安に手術を行います。
判断をするタイミングは、30〜32週頃に検討を始めるところもあれば、36週までの妊婦健診の結果をもとに検討するなど、状況や医療機関によってさまざまです。
一方、緊急帝王切開が行われるのは、母体か胎児のどちらかまたは両方に問題が起こり、急いで胎児を取り出さなければならない場合です。
つまり、どちらも経腟分娩では危険が伴うと判断された場合に帝王切開が行われます。
帝王切開に係る時間と入院期間
帝王切開は、所要時間が多くの医療機関で麻酔開始から1.5〜2時間程度、入院期間は経腟分娩より2〜3日程度長くなる傾向があります。
お腹を切開してから誕生までは、数分程度の場合が多いといわれる一方で、麻酔が効くまでの時間と、誕生後の胎盤の除去や縫合といった後の処置に時間がかかります。
そのため、分娩全体の時間は帝王切開の方が短い傾向がありますが、母体の回復は経腟分娩の方が早いため、どちらが長いとは一概にはいえないでしょう。
予定帝王切開になるケースとは

予定帝王切開になるケースは、経腟分娩がさまざまな理由で難しいと医師が判断し、決定されます。
ここでは予定帝王切開になるケースについて紹介します(帝王切開の適応は医療機関によって異なります)。
多胎妊娠
多胎妊娠とは、双子や三つ子以上などを妊娠しているケースです。
双子の場合は、逆子でないこと、母子ともに経過が順調であることなど、条件が揃えば、経腟分娩を試みる医療機関もあります。
しかし三つ子以上の場合は特に、胎児同士が邪魔をし合って、うまく下がってこられない場合があります。
また、多胎妊娠は胎児の数が多いほど、子宮が大きく引き伸ばされ、筋肉の収縮力が弱まるため、微弱陣痛になりやすいです。
これらの理由から、多胎妊娠は経腟分娩が難しくなる可能性があります。
逆子
逆子(骨盤位)は、胎児の頭がお腹の中で上になっている状態です。
身体の中で一番大きい頭が最後に出ることになるため、娩出時に難しさが生じることがあります。
また逆子には、以下のように種類があります。
| 種類 | 状態(姿勢) |
|---|---|
| 単殿位 | 一番下にお尻があり、足が上がってV字になっている※逆子の8割がこの姿勢 |
| 複殿位 | 胎児があぐらをかいている |
| 全足位 | 足が両方下に下がり、立っているような状態 |
| 不全足位 | 片足立ちのような状態 |
| 全膝位 | 両ひざをついているような状態 |
| 不全膝位 | 片膝を付き片足が上に上がっている |
妊娠中期(16〜27週)に逆子だった場合でも、その後回転して頭位(頭を下に向け、背中を丸めた状態。正常で安全な姿勢)になる確率も高いため、心配しすぎる必要はありません。
妊娠34週(妊娠後期)頃に逆子の場合、安全な出産のために帝王切開を選択肢に入れ、手術日程の調整や準備を始めるケースが一般的です。
前置胎盤
胎盤は通常、子宮の上部か前壁・後壁のどれかに付着していますが、前置胎盤は胎盤が低い位置に付着して子宮口を覆ってしまっているため、経腟分娩ができません。
胎盤の位置は超音波検査で確認できるほか、痛みのない出血(警告出血)で気づくこともあります。
妊娠の早い段階で前置胎盤が疑われている場合でも、週数が進むと子宮の下部が伸びて、子宮口から胎盤が離れるケースも多いです。
32週頃までに解消されなければ、基本的には帝王切開になります。
しかし、胎盤が子宮口を覆っていない『低置胎盤』の場合は、帝王切開の準備をした上での経腟分娩を検討するケースもあります。
児頭骨盤不均衡
胎児の頭の大きさや形などを理由に、産道を通り抜けるのが難しいと判断されると、帝王切開になる場合があります。
胎児の頭が骨盤より大きい、母体の身長が150cm以下などの身体的特徴がある、分娩直前においても児頭が骨盤内に下がってきていない場合などです。
この場合、念のためにレントゲン検査などでの骨盤計測や、超音波検査による児頭計測が行われることがあります。
経腟分娩を試みても児頭が骨盤内に下がってこない場合は、緊急で帝王切開に切り替えることもあります。
緊急帝王切開になるケースとは

経腟分娩を行っている最中に、胎児の心拍数に問題があったり、分娩がなかなか進まなかったりする場合などに、医師の判断で帝王切開に切り替えることがあります。
緊急帝王切開になるケースについて紹介します。
常位胎盤早期剥離
胎児が生まれてから剥がれるはずの胎盤が、生まれる前に剥がれてしまうことを常位胎盤早期剥離といいます。
胎盤を通して胎児に届くはずの酸素や栄養が届かず、危険な状態になります。
母体にとっても子宮内で大量の出血や止血異常などのリスクがあるため、母子ともに危険にさらされてしまう状態です。
一刻を争う状態になるため、緊急帝王切開になります。
臍帯脱出
臍帯脱出は、胎児より先に臍帯が外に出てしまうことです。
臍帯とは、母体と胎児をつないでいるへその緒のことで、必要な栄養や酸素を送り、不要な老廃物を母体に送り返すという、大事な役割を担っています。
臍帯が胎児より先に出てしまうと、胎児と産道の間に挟まれて強く圧迫され、胎児が危険な状態になるため、帝王切開が行われます。
胎児心拍異常(胎児機能不全)
何らかの原因で胎児が苦痛を感じ、安全な分娩が急がれる状態になっている場合、緊急に帝王切開が行われます。
胎児の酸素不足が原因で心拍数が異常に早かったり遅かったりする状態が続く、羊水が減少する、臍帯が圧迫されるなどの場合があります。
回旋異常
胎児は頭を回転させながら産道を下がってきますが、この回旋がうまくいかないのが回旋異常です。
回転しながら頭を小さくし、体の向きを上手に変えながら進むことで狭い産道を通過するため、回転がうまくできないと分娩の進行が停止しやすく時間がかかります。
陣痛があるにもかかわらず途中で引っかかって分娩が止まってしまう、長期化するなどの場合、帝王切開が検討されます。
遷延分娩
遷延分娩とは分娩が遅れることで、分娩開始後、初産の場合は30時間以上、経産婦の場合は15時間以上かかっても分娩に至らない状態を指します。
また、子宮口が全開大になってから2時間にわたり分娩が進行しない場合は、分娩停止にあたると定義されています。
遷延分娩の際に検討される方法は以下の3つです。
- 陣痛促進剤
- 補助分娩(吸引・鉗子分娩)
- 帝王切開
胎児の心拍数が下がったり、母子の体力が尽きたりする危険性から、検討すべき手段のひとつとして、帝王切開があります。
予定帝王切開の流れ

予定帝王切開がいつ決まるのか、手術が実際どのような流れで進んでいくのか、前もって知っていれば落ち着いて手術に臨めるでしょう。
予定帝王切開の手術の流れを紹介します。
予定帝王切開の場合のスケジュール
予定帝王切開は、経腟分娩の予定日である40週に比べて少し早い、37〜38週を目安に日時を決めて行われます。
母子の安全を最優先してリスクを回避するには、陣痛が来る前から手術を行う必要があるためです。
妊娠30〜32週くらいになると手術日の予定を相談し、34週〜35週くらいになると術前検査や同意書の説明、麻酔科の医師の診察などが行われます(医療機関によります)。
検査
予定帝王切開の術前検査では、以下のような検査が行われます。
- 超音波検査
- 心電図
- 胸部レントゲン
- ノンストレステスト
- アレルギーテスト
- 血液検査
輸血に必要な場合の血液型や感染症の有無、局所麻酔のリスク回避など、帝王切開を安全に実施するために行う検査です。
手術前の処置
手術前の処置も、術前検査同様に安全な手術のために行われます。
内容は以下の通りです。
- 剃毛・消毒
- 浣腸
- 足に弾性ストッキングを着用(血栓防止のため)
- 輸液や輸血がスムーズにできるよう血管を確保
剃毛や消毒・浣腸は、傷口からの感染を防ぐために行われます。
麻酔
帝王切開の場合、麻酔が効いているため出産時に痛みを感じません。
帝王切開の麻酔には、大きく分けて全身麻酔と局所麻酔があります。
2つの違いは以下の通りです。
| 局所麻酔 | 全身麻酔 | |
|---|---|---|
| 母体への影響 | 意識がはっきりしている自分で呼吸ができる | 眠っているため意識はない呼吸の補助が必要 |
| 胎児への影響 | ほとんどない | 呼吸が弱くなったり、眠くなったりすることがある |
| 麻酔の方法・痛み | 針の細い表面麻酔を行ってから局所麻酔の針を刺す一般的には注射程度の痛み | マスクで酸素を吸ってから、点滴による麻酔薬投与 |
| 十分に麻酔が効くまでの時間 | 比較的短い | とても短い |
予定帝王切開は、ほとんどが下半身だけに効果がある局所麻酔で行われます。
意識がある状態のため、産声を聞くことが可能です。
緊急性が高く時間がないときや急変時などには、全身麻酔が行われる場合があります。
下腹部の切開
帝王切開で行われる腹部の切開には、縦切開と横切開があります。
両者の違いは以下の通りです。
| メリット | デメリット | |
|---|---|---|
| 縦切開 | 腹筋の向きに沿って切開するため回復が早い | 傷跡が目立ちやすい |
| 横切開 | 傷が下着のラインに沿うため目立ちにくい | 切開に時間がかかる緊急時は縦切開になることもある |
傷跡を目立たせたくない方は、どこを切るのか気になるところですが、それぞれのメリット・デメリットがあります。
子宮の切開・胎児を取り出して縫合
子宮の切開は、何か問題がある場合に縦に切ることがありますが、一般的には『子宮下部切開』といって、出血量を抑えるため比較的薄く血管が少ない子宮下部を横に切ります。
切開から誕生までは数分程度で、その後に胎盤やへその緒の処置を行って縫合します。
局所麻酔は意識があるため、新生児の状態が良ければ、出産して数分から数十分以内には新生児の顔を見ることが可能です。
帝王切開手術後
手術当日はベッドの上で過ごすため、水分や食事は点滴で行われ、尿管が設置されます。
翌日以降、飲水や食事が段階的に始まります。
少しずつ体も動かせるようになり、血栓症(エコノミークラス症候群)の予防もあり、早ければ翌日から歩行も開始するため、新生児との面会も可能です。
術後2〜3日から授乳も始まるため、できる範囲で新生児のお世話を進めていきましょう。
帝王切開のリスクや注意点

帝王切開のリスクや注意点について紹介します。
帝王切開になりやすい人
帝王切開になりやすい人は、以下のような特徴があります。
- 母体側の特徴
- 骨盤が狭い・変形している
- 産道が狭くなっている
- 帝王切開をしたことがある
- 胎児側の特徴
- 骨盤よりも大きい
- 逆子
- へその緒が胎児に絡まっている
- 胎児が陣痛時のストレスに耐えきれない
帝王切開で生まれた子は、経腟分娩で生まれた場合に比べると呼吸障害が起こりやすいといわれています。
しかし、成長や育児に関しては、個々の子どもの状況によって異なるものであり、経腟分娩と帝王切開の違いとして大きく差が開くものではないといえるでしょう。
出産が難しいことは悪いことではなく、生まれた後に母子ともに健康であれば安産といえます。
手術のリスクがある
帝王切開は手術のため、以下のようなリスクがあります。
- 出血
- 血栓症
- 感染症
- 癒着など
一般的な手術としてのリスクはありますが、陣痛の痛みを回避できる、難しい分娩でも母子の安全を確保できるなどのメリットもある出産方法です。
子宮復古が遅れる
帝王切開は、経腟分娩に比べ『子宮復古』が遅れる傾向があります。
子宮復古とは、妊娠により増大した子宮が急速に収縮し、もとの状態に戻ることを指す言葉です。
子宮復古が遅れると、悪露が長引くほか、感染症や出血のリスクも高まりかねません。
また、母体の回復を優先するため、授乳開始が遅れる場合が考えられます。
授乳による子宮収縮の促進が得られにくいことも、子宮復古に時間がかかる要因といえます。
次回以降の分娩に影響がある
帝王切開での出産は、切開した部分が陣痛などに耐える力が弱くなるため、次回以降の分娩方法は、子宮切開の方法や母体・胎児の状況を踏まえて慎重に判断されます。
二人目以降や次の出産のことを考えて、帝王切開をしたこと、子宮の切開方法(縦か横か)などを母子手帳などにしっかりと記録しておきましょう。
健康保険や高額療養費制度が適用できる
本来出産費用は、健康保険の対象外です。
しかし帝王切開の場合は、健康保険の適用外と適用可能の部分を合わせて請求されます。
そのため、保険適用になる部分に対しては、高額療養費制度が適用になります。
高額療養費制度の詳細・申請については、加入している健康保険(保険者)や勤務先、自治体、医療機関の相談窓口に問い合わせてみましょう。
まとめ
帝王切開は、母子ともに安全に分娩を行うための出産方法のひとつです。
具体的な手術の流れやリスク、どのような場合に選択されるのかなどについて理解を深めておくことは、大切な出産を落ち着いて迎える第一歩となるでしょう。
新中野女性クリニックでは、「赤ちゃんと母体が安全で元気な状態で出産いただくこと」を心掛けております。それは、帝王切開も同様です。
また、出産時まで骨盤位(逆子)の場合、当クリニックでは初産婦の方でも、ご希望があって条件が揃えば、経腟分娩も可能です。
ツボによる骨盤位(逆子)の矯正も行っております。どうぞクリニックにご相談ください。



