妊娠中の体重増加の目安は?増える理由・起こりうるトラブル・管理のコツを紹介

妊娠中の体重増加は、多くの妊婦さんにとって気になるテーマのひとつです。
実は、妊娠中の体重増加には妊娠前の体格をもとにした目安があり、母体と赤ちゃんの健康を守るうえで重要な指標とされています。
増えすぎても、不足してもそれぞれにリスクがあるため、適切な範囲を知って安心につなげましょう。
この記事では、体重増加の目安や増える理由、起こりうるトラブル、適切な管理方法まで、詳しく紹介します。
妊娠中の体重増加の目安は?

「何キロから体重管理が必要なのか」と疑問を持つ方も多いかもしれませんが、妊娠中の体重増加には母体と赤ちゃんの健康を守るための目安があります。
妊娠前の体格によって推奨される増加量は異なるため、まずは自分の体格をベースに考えることが重要です。
ここでは、妊娠中の体重増加の目安や増加の内訳を紹介します。
妊娠前のBMIによって目安が異なる理由
妊娠中の体重増加の目安が人によって異なるのは、妊娠前の体格によってリスクの内容が変わるからです。
やせ型の方は、もともと栄養の蓄えが少ない状態で妊娠に臨むことが多く、より多くの体重増加が必要とされています。
一方、肥満傾向にある妊婦さん(BMI25以上の方)は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病などを発症しやすいことから、増加量を抑えた管理が重要になります。
このように、体格ごとにリスクが異なるため、自分のBMIを基準に目安を確認しましょう。
BMI別の体重増加の目安
日本産科婦人科学会(JSOG)は2021年、妊娠前のBMI(Body Mass Index:体格指数)別に体重増加の目安を公表しています。
BMIとは『体重(kg)÷身長(m)²』で算出できる体格指数です。
例えば、身長160cm・体重50kgの方であれば、50÷1.6÷1.6=約19.5となり、『普通体重』に分類されます。
| 妊娠前の体格 | BMI(kg/m²) | 体重増加の目安 |
|---|---|---|
| 低体重(やせ型) | 18.5未満 | 12〜15kg |
| 普通体重 | 18.5以上25.0未満 | 10〜13kg |
| 肥満(1度) | 25.0以上30.0未満 | 7〜10kg |
| 肥満(2度以上) | 30.0以上 | 個別対応(上限5kgが目安) |
出典:日本産科婦人科学会『妊娠中の体重増加指導の目安について』(2021年)
この目安はあくまで参考値です。体重の増え方には個人差があるため、不安を感じる場合は、自己判断せず担当医師に相談することをおすすめします。
妊娠中に体重が増える理由

妊娠中は赤ちゃんの体重だけでなく、胎盤や羊水などによって7〜8kgは体重が増えます。
つまり、妊娠中の体重増加は、食べすぎや運動不足だけが原因ではないということです。
赤ちゃんを育てるために母体がさまざまな変化を遂げることが主な要因であり、いずれも妊娠・出産に欠かせない変化であるといえます。
ここでは、妊娠中に体重が増える主な5つの理由を紹介します。
胎児や胎盤が成長するから
赤ちゃんは妊娠週数を重ねるごとに発育し、出生時には平均約3kgになります。
胎盤も赤ちゃんとともに成長して約0.5kgに達し、羊水も同様に約0.5kgを占めることから、これらの関連組織だけで約4kgの増加となります。
赤ちゃんが順調に育っているからこそ増える重さであり、体重増加の根本的な要因のひとつです。
胎児の発育ペースには個人差があるため、増え方も人によって多少異なります。
血液量が増加するから
妊娠中は赤ちゃんへ酸素や栄養を届けるために、母体の循環血液量が増加します。
妊娠後期にかけて、血液量は非妊娠時と比べて約40〜45%増加するとされていて、血液の重さだけで1.5〜2kg程度増加します。
この変化は出産時の出血への備えとしても重要な役割を果たすもので、母体に欠かせない生理的な反応です。
血液量が増えることで貧血が起きやすくなるのも、こうした変化が背景にあるためです。
体内の水分量が増加するから
妊娠中は血液量の増加や組織の変化にともない、体内の水分量も増加します。
これにより1〜2kg程度増加するとされていて、足や顔のむくみとして現れることも多いです。
特に妊娠後期には、大きくなった子宮が下半身の静脈を圧迫することもひとつの要因となります。
症状の現れ方には個人差はありますが、急激なむくみや体重増加が続くようなときは、自己判断せず担当の医師へ相談しましょう。
子宮や乳房が発達するから
子宮は妊娠中に赤ちゃんを収容するために大きく発達し、約1kgの重量増加となります。
乳房も産後の授乳に向けて腺組織が発達し、子宮と同様に約1kg程度増加するのが一般的です。
子宮と乳房だけで合計2kg程度になることから、これらの変化も体重増加の大きな要因のひとつといえます。
これは出産・授乳という大切な役割に向けた準備として起こる変化であり、妊娠中に自然に生じるプロセスと理解しておくとよいでしょう。
出産や授乳に向けて脂肪が蓄積するから
妊娠中はホルモンバランスの変化により皮下脂肪がつきやすくなります。
これは、赤ちゃんを衝撃から守ったり、出産時のエネルギー消費や産後の授乳に備えるための、母体による自然な準備です。
蓄積される脂肪量には個人差があるものの、2〜4kg程度になることもあります。
体質的に食べていないのに体重が増えると感じる場合も、こうした出産や授乳に向けた脂肪の蓄積が要因のひとつです。
妊娠中の体重増加によって起こる可能性のあるトラブル

体重の増えすぎは、母体や赤ちゃんにさまざまな影響を及ぼす可能性があります。
どのようなトラブルが起こりやすいのかを把握しておくことが、適切な体重管理への第一歩です。
ここでは、体重増加によって起こりうるトラブルを紹介します。
妊娠高血圧症候群のリスクが高まる
『妊娠高血圧症候群』とは、妊娠中に高血圧を発症する病態の総称で、妊婦の約10〜20人に1人に起こるといわれています。
体重が過剰に増加すると発症リスクが高まるとされていて、肥満傾向にある方は特に注意が必要です。
重症化すると胎盤の機能が低下し、胎児発育不全や早産のリスクが上昇するほか、母体にも肝臓や腎臓などへの臓器障害が及ぶことがあります。
自覚症状が出にくいことが多いため、妊婦健診での血圧測定が早期発見のために重要です。
妊娠糖尿病のリスクが高まる
『妊娠糖尿病』とは、妊娠中に初めて発見される糖代謝異常のことで、体重が増えすぎると発症リスクが上昇する可能性があります。
過剰な体重増加は、血糖コントロールをさらに難しくする要因になるため注意が必要です。
母体への影響としては帝王切開率の上昇が挙げられ、一般的に4,000g以上と定義される巨大児のリスクが高まることが知られています。
産後に正常に戻る方がほとんどですが、のちに糖尿病を発症するリスクが高まるとされているため、産後も適切な健康管理を行うことが重要になります。
腰痛や体への負担が大きくなる
妊娠中は骨盤周辺の靭帯が緩みやすく、もともと腰への負担が大きくなりやすい時期です。
体重が必要以上に増えると、腰や膝を支える筋肉にさらなる負荷がかかり、腰痛や膝の痛みが悪化しやすくなります。
痛みが強まると日常動作が制限され、運動量の低下がさらなる体重増加を招くという悪循環に陥ることもあるでしょう。
腰痛の程度には個人差がありますが、過剰な体重増加を避けることが、症状の軽減につながると考えられています。
特に短期間での急激な増加に注意し、体重増加ペースは妊娠中期〜後期で週300〜500g程度を目安にしてください。
難産につながる可能性がある
体重が過剰に増加すると、産道や子宮周辺に脂肪がつきやすくなり、赤ちゃんが産道を通りにくくなる可能性があります。
妊娠糖尿病に伴って赤ちゃんが巨大児になった場合、分娩中に赤ちゃんの肩が引っかかる『肩甲難産』のリスクが高まることもあるでしょう。
その結果、微弱陣痛による分娩の遅延が起きたり、帝王切開への移行が必要になるケースも見られます。
難産は母体の消耗にも直結することから、適切な体重管理が安産への重要な手段とされています。
産後の回復が遅れることがある
分娩が長引くほど母体の消耗は大きくなり、産後の体力回復が遅れやすくなる傾向があります。
体重増加に関連して、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を発症した場合、産後も高血圧や血糖の異常が続くリスクがあるため注意が必要です。
さらに、妊娠中に過剰な体重増加があった女性では、将来の高血圧や糖尿病、肥満のリスクが高まる可能性があるという研究報告もあります。
産後の健康まで見据えると、妊娠中からの体重管理が重要といえるでしょう。
妊娠中は痩せすぎにも注意が必要

妊娠中は体重が増えすぎることを心配する方が多い一方で、増えなさすぎも母体と赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があります。
痩せ型の方や目安を下回る体重増加の場合、低出生体重児(出生体重2,500g未満)が生まれるリスクが高まる点に注意しましょう。
国立成育医療研究センター『日本人女性における母親の低体重が乳児および母親の転帰に及ぼす影響:系統的レビューとメタ分析』によると、妊娠前に低体重だった女性から生まれた子どもは低出生体重児の可能性が約1.6倍、早産が約1.2倍になる可能性が高いと報告されています。
胎児期の栄養不足が将来の生活習慣病リスクにも及ぶという報告もあることから、長期的な影響も無視できません。
増えすぎのみならず、不足にも目を向けた両面からの管理が、母子の健康を守るために大切です。
妊娠中の体重管理のコツ

妊娠中の体重管理は、無理な食事制限ではなく日々の生活習慣の積み重ねが基本です。
増えすぎず不足しすぎず、適切な範囲に保つためのポイントを事前に知っておくことが、安心した妊娠生活の土台になります。
ここでは、妊娠中の体重管理の5つのコツを紹介します。
食事内容を見直す
妊娠中の体重増加や痩せすぎを防ぐには、主食・主菜・副菜をそろえた1日3食を基本に、栄養バランスを整えることが重要です。
妊娠中は特に鉄分やカルシウム、葉酸など必要とされる栄養素が増えます。
カロリーを気にするあまり食事量を極端に減らしてしまうと、赤ちゃんの発育にも影響する可能性もあります。
野菜や海藻類をしっかり取り入れながら、糖分や脂質の多い食品に偏らない食事を心がけることが、適切な体重管理につながるでしょう。
間食や食べ過ぎを防ぐ
つわりが落ち着いた後や産休に入ったタイミングは、食欲が戻って食べすぎになりやすい時期だといわれています。
お菓子やジュースなど、高カロリーで栄養価の低いものは体重増加の要因になりやすいため、間食にはナッツや果物、乳製品など栄養価の高いものを少量選ぶのがおすすめです。
また、空腹が続くと反動で過食になることもあります。1日の食事を小分けにして、血糖値の急激な変動を防ぐ工夫も取り入れてみてください。
無理のない運動を取り入れる
妊娠経過に問題がなければ、ウォーキングやマタニティヨガなどの軽い有酸素運動を生活に取り入れることが体重管理に役立ちます。
激しい運動は避けつつも、適度に体を動かすことは代謝の維持や気分転換にもつながります。
切迫早産などの指摘がある場合は、運動を控える必要があるため、新たに運動を始める際は事前に担当医師への確認が必要です。
体調に合わせて無理のない範囲で続けることが、安全な体重管理の基本といえます。
体重をこまめに記録する
毎日同じ時間帯に体重を測定して記録する習慣をつけると、増加のペースを客観的に把握しやすくなります。
数値の変化を記録することで急激な増減に気づきやすくなり、食生活や運動習慣を見直すきっかけにもなるでしょう。
1週間単位での増減を確認することで、日々の誤差に左右されず傾向を把握する視点が生まれます。
グラフ化して視覚的に確認するのも有効です。
医師の指導を受けながら調整する
妊娠中の体重管理は、自己判断での食事制限や過度な運動は避け、医師や助産師の指導のもとで進めるのが基本です。
体重が目安を大きく外れた場合や急激な増減が続く場合は、自分で対処しようとするよりも、早めに産婦人科に相談したほうがよいでしょう。
妊娠経過や体格には個人差があるため、専門家による状況に応じた適切なアドバイスを受けることが、無理のない体重管理につながります。
まとめ
妊娠中の体重増加には、妊娠前の体格をもとにした目安があります。
増える理由の多くは、赤ちゃんの成長や母体の生理的変化によるものとされ、増えすぎと不足のどちらにもリスクがあります。
食事内容の見直しや適度な運動、体重の継続的な記録を組み合わせながら管理していくことが、母子の健康を守ることにつながるでしょう。
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